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日本クラフト&デザイン文化を支える作家たち

長時間煮込める鋳物の鍋には 握りやすい持ち手がつけてあるように、 どの作品にも使い手への配慮がある。

鋳造/東京都新宿区

荻野 克彦

Katsuhiko Ogino

 家具などの木工、陶磁器、鋳物を中心に、生活用品全般をデザインする荻野さんだが、今回の出品は鋳物と陶磁器。そのいずれにも、確かなポリシーとメッセージがある。

 それは、弱者や一人暮らしの人たちへの心配りである。たとえば鋳物の鍋。直径14cmの小さなものだが、鋳物ならではの重さによって圧力鍋に近い効果があり、長いこと煮込むポトフのような料理をおいしく仕上げる。年老いたり一人暮らしだったりすると、ついつい、ざつになりやすい調理も、この鍋に素材を入れて弱火にかけておくだけで、素材のうまみを引き出し、立派なご馳走になる。直径は18cm、23cmのものもあるから、一般の家庭でも重宝する。

  さらに、持ち手のデザインが秀抜。握力が弱い人でも安心して握れるように反っている。ごつく感じさせないアールのとり方にも、荻野さんならではのデザインが表れている。

  「Tea for two」というおしゃれな名のお茶のセットは、受け皿にポットと2種類のカップの組み合わせ。ふたりでお茶を、というときには360cc入りのポットのお茶をふたつのカップに。ひとりで楽しむときには、たっぷり2杯。裏返すと、漆塗りなどのお盆を傷つけないように底がすべすべしている。この小ぶりでコンパクトなポットは実に有機的なフォルムで、ハンドルまで一体化して作られている。余分な出っ張りがない。あとからハンドルをくっつけたものとは異なり、継ぎ目がない分、きれいに仕上がっている。

  受け皿が卵形をしているのは、カップをのせた脇にクッキーなどを添えるように。これは、とても便利そうだ。テーブルをシンプルにするし、洗い物も減るのだから。

  こんなふうに、作品のいずれにも共通しているポリシーが、暮らしへのやさしさ、便利さ。それは、暮らしを楽しくしながら、質的向上をも誘発する。荻野さんは自分ならではのもの、さらに自分にしかできないもの、を目標にデザインし続ける。

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