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日本クラフト&デザイン文化を支える作家たち

テーマは、宇宙。 漆造形のブローチの軽さに驚く。

東京都/中野区

山口 理子

Masako Yamaguchi

 一見すると、ずっしりと重量感のある印象だ。しかし、手にとってみると、えっ?と拍子抜けするほど軽い。なるほど、これはブローチなのだから、重くては用をなさないだろう。

 この、銀か錫かに見まがう金属製のようなブローチは、漆塗りの作品。桂の木を下地に、漆に金属粉を混ぜて下塗り、中塗り、上塗りと、何回も塗り重ねたものである。たとえばグレーに見えるのは、錫粉。微妙に色が変わって見える箇所には青などの顔料が入れてある。赤く見える部分は銅粉を使っている。何回も塗り重ねてから研ぎ出していく、鞘塗りなどの昔ながらの手法を使って表現する。研ぎ出していくと、模様が浮かんでくる。あたかも世界地図であるかのような模様も。山口さんのテーマは、宇宙。だから、そのイメージにかなう模様が現れるまで、研ぎ出し続ける。偶然一回で、ということもないではないが、長い時間を費やした作品がほとんどである。

 さらに、接着剤としての漆の特性を生かして、ラピスラズリのような石、アンモナイトなどをはめ込む。アンモナイト?ところがこれが、意外に似合うのだ。合わせてみて、山口さんご本人がびっくりしたほどである。漆には特有の温かみがあるものだが、それが思いがけないものとも調和させてしまうのだろう。卵の殻や貝も埋める。貝はもちろん螺鈿である。グレーの地に貝が青くちらちらと光るさまは、星々をちりばめた宵の空に似て、まさに宇宙であろう。

 本来は彫刻家である山口さんは、学生時代にはさまざまな素材を彫刻にしたが、「軽いものを作りたい! 」と志した結果、乾漆にたどり着く。乾漆なら、大きなものでも軽い。それが、非常にインパクトのある大きなジュエリーにも結びついた。

 これらのブローチを、使わないときには、オブジェとして棚に飾った人がいた。とりわけ大きなものを帯止めにした人もいた。ブローチとしても、胸だけでなく、腕にも肩にも腰にもつけてほしい。その大きさと軽さ、漆の美しさを、とらわれることなく、広く使いこなしてほしい、と願う山口さんである。

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