漆の歴史は古い。石器時代に石と木をくっつけて斧などを作るにも使われたという。それは、接着剤としてどれほど強力であったかということの証でもある。
その漆で作品を作る隼瀬さんは、若い。まだ、29歳だ。作品を見ると、若さがわかる。フォルムと色が実にモダンであり、木目を生かした肌の使い方も斬新である。
たとえば、出品された花器。漆製品としては珍しい釣舟に使えそうな形なのだが、こんなユニークなフォルムができるのも、もともと、漆ではなく木工が専門なので、木地を自由に扱えるせいもあるのだろう。
素材は軽く柔らかいシルキーオークや欅で、部分的にざらっとした木目を残している。その柔らかい木地の木目を強調するために、うずくりで仕上げるのである。
木目を生かした作品を多く作るのは、とにかく木が好きだから、木そのものの表情を残したいのである。その表情が、伝統的な漆塗り特有のなめらかな肌と組み合わせることによって、さらに強調されている。
錫の粉を入れた銀色や黒などの色の使い方も、全体のモダンな印象をより強めているといえる。
今の若い人らしく、ナチュラルにやりたいと思う隼瀬さん。漆に惹かれたのも、この天然の塗料が、美しいだけでなく使用するのに安全だからだった。それは、使い手だけでなく、作り手である自分にとっても作業をする際の安心感となる。
漆製品は高級そうだし、価格も高いし、と手を出しにくい若い人は多いだろう。隼瀬さん自身もそうだったから、それはよくわかる。しかし、漆を知るにつれて、その堅牢さに驚き、安全さに気づいて、もっと若い人に使ってもらいやすいアイテムを作りたい、と思うようになった。それを探すことが目下の目標である。





