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日本クラフト&デザイン文化を支える作家たち

錫の酒器には冷酒が似合う。 すべらないように文様を施した器は ほどよい重みも手に快い。

金属/東京都港区

鶴岡 鉦次郎

Shojiro Tsuruoka

 錫の魅力は、その銀色。実は素人には銀との見分けがつかないのだが、使い勝手からいえば、錫のほうが断然いい。

 日本は湿度が高いので、銀は置いておくと黒ずんでしまう。日本人は昔からその黒ずみを古びとして賞してきたが、美術品はともかく生活用品としては必ずしもよしとしない。ところが錫は、銀ほどは黒ずまない。少し黒ずんでも、手でさわっているときれいになってしまう。日常、手軽に使えるということである。

 さらに錫は、酒器なら入れておくと酒がうまくなる、味が変わらないし、口当たりもよくなるといわれる。花器なら水が腐らない、しばらく取り替えなくても大丈夫、とも。これは、錫に殺菌力があるからではないかとされているのだ。

 ここに出品されているのも、酒器。ぐい呑みの肌がでこぼこしているのは、錫が柔らかいので使っているうちにへこんだりゆがんだりするのを目立たせないため。ビールのグラスの文様は、つるつるして冷えている肌を持ちやすくするため。どの器も、やや重く感じられるのは、適度な重さが使いやすいため。このような使い手に対する心配りが、すべての器になされている。

 銅壷もない現代では、ちろりを使う人も少なくなったが、それなら、ちろりはデカンタにすればいい。錫の酒器は、どちらかといえば、冷たい酒に合う。その銀色も愛でながら、こわれない錫の酒器を長く愛用したいものである。

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